内定の法的地位とは?
A.内定通知を受けることによって成立するのは「入社予定日を就労の始期とする『解約権留保付労働契約』」です。つまり、法律上「内定」は労働契約の締結であるとみなされます。 したがって内定取り消しとは労働契約の解約を意味します。そのため普通の正社員が「解雇」される場合と法律上基本的には同じ扱いになるということになります。 ただし、内定という関係の特殊性から、通常の解雇よりは解雇の基準が部分的に緩められています。
具体的には、内定の取り消しであっても、採用時に予期できなかった身体的・精神的な変化によって予定されていた労働ができないとみなされる場合、 企業経営の悪化により採用計画の見直しが緊急に必要な場合などに限定されます。
しかし、企業経営悪化による内定取り消しの場合、たとえ「経営の悪化」によって内定が取り消されることがある、とあらかじめ内定の契約書に書かれている場合でも、 通常の整理解雇と同様の法理による解雇規制がかかります。
内定取り消しの合理性の基準(整理解雇の四要件)
1.内定取り消しの必要性(本当に必要な程度の経営不振だったのか)
2.内定取り消しを回避する努力を払ったのか(事業を縮小する部門以外での採用など)
3.内定取り消し者の選定の合理性(なぜその内定者を選ばなければならなかったのか)
4.説明の努力(きちんと説明を行い、納得してもらう努力をしたのかどうか)
もし合理性の乏しい内定取り消しを行った場合には、損害賠償の請求が可能になります。会社の解約に全く合理性が無い場合には、 100万円単位で損害賠償が支払われることもあります。
もちろん賠償だけではなく、内定の取消しを無効にし、入社の道を開くことができる可能性もあります。 内定が出された段階で学生の側には他の企業での就職活動を中断することが求められる以上、どれだけたくさんの会社から内定通知をもらっていたとしても一定の企業と 「内定」について確認した時点でそのほかの企業に採用される可能性はなくなってしまいます。学生の側にはそれだけのリスクを負わせるのですから、 当然、企業側が解約をする際には合理的な理由が求められます。内定の取消しに合理性がなければ、「従業員としての地位」を確認する訴訟が可能なのです。
この他に、「内定」特有の解約基準もあります。卒業できなかった場合のように、内定を出した時点では到底わからなかったこと、 あるいは内定を出した時点とは学生の側の状況が変化したという場合です。しかし、これらが認められる場合も、 本当に会社の側からは内定時点で判断できなかった場合に限られるということに留意する必要があります。