年俸制とは?
A.近年、賃金制度において「年俸制」を採用する企業が増えています。年俸制とは、賃金の全部または一部を、労働者の業績を評価して、年単位で決定する賃金体系のことをいいます。 まず、年俸制の導入にあたっては、就業規則(Q&A就業規則とは?を参照のこと。)の変更が必要であり、 合理的な理由がなければ認められません。就業規則には賃金の決定基準が明記されなければならないことになっています。
労働基準法には、賃金は毎月1回以上支給しなければならないと定められているため、年俸制であっても、年俸額を12で割った賃金額が毎月支払われなければなりません。 これは法律で義務付けられています。さらに、年俸制であっても、所定労働時間をこえて働けば残業代の支払いが当然の義務として発生します。 法定労働時間(週40時間、一日8時間)をこえる残業については、通常の場合と同様に割増賃金(一時間当たり125%の賃金)が支払われなければなりません。
この点は、「年俸制にすれば残業代は支払わなくてよい」と勘違いをしている経営者も多いため注意が必要です。仮に残業代込みの年棒設定をしている場合でも、 そこで想定されていた残業時間以上の残業をした場合は、残業代が支払われなければなりません。
・年俸制の会社に入るときに注意すること
年俸制の会社に入るときに注意すべきことは、第一に、上に書いたような法令遵守の姿勢が会社にあるかどうかです。「年俸制なので残業代は払われない」などといっている場合には、 会社のコンプライアンスに対する姿勢が疑われるので、入社してからもさまざまなトラブルに遭遇することが予想されます。そうした会社はなるべく避けたほうがよいでしょう。
第二に、年俸制で残業代が支払われなくてもよいとされる場合に、「裁量労働制」という法的な制度があります。これは長時間労働しても一定時間働いたものと「みなす」という制度で、 残業代を支払わなくてもよい制度だとされています。しかし、こうした制度の名前が出てきた場合にも注意が必要です。専門職以外の裁量労働制は、 新卒後5年程度の経験が必要な場合にしか認められていません。また裁量労働の場合にも、働いたものと「みなし」た時間と実際の時間の間に大きなずれがあれば、 その「みなし」た時間そのものを修正する必要が出てきます。
「裁量労働」を悪用すれば長時間労働・サービス残業ができる、残業代がつかない「使い放題」の年俸制ができるのだ、と考えている会社も多くあり問題となっています。 もし年俸制に「裁量労働制」という単語がセットになって出てきた場合にも、本当に制度どおり運用するものかどうか、注意してみる必要があります。 少なくとも、新卒から裁量労働などといっている企業については「ブラック会社」の可能性が高いものと思われます。