派遣とは?
A.派遣とは、雇用契約を結ぶ会社(派遣会社)と実際に働き、指揮命令を受ける会社(派遣先)とが異なる働き方です。一番のポイントは、
実際に雇う会社とは基本的に法的な雇用関係は生まれないということです。そのため雇用の継続や安全管理などで派遣先が無責任になりがちです。
また、派遣会社も自分の社員である派遣社員よりも、顧客である派遣先企業への売込みを優先しがちで、派遣社員をないがしろに扱うことが絶えないのです。
具体的には以下のような形で問題が起きてきます。「契約内容と実際の業務とが違う」、「能力不足を理由に、自分と別の人間とを差し替えるよう要求された」、「労災を隠された」、 「派遣期間の途中で派遣契約が解除され、解雇された(派遣切り)」。
さらに、派遣社員は、雇用が不安定であるため、その不安定さを利用した違法なハラスメントやいじめが横行しています。労働相談の中には、派遣社員の弱い立場に付け込んだ性的嫌がらせ、
交際の強要などが見られるほか、いじめの対象にもなりやすくなっています。
派遣先からすれば、「いつでも交換できる」部品のように扱われる傾向があるようです。
・派遣を選ぶ場合のポイント
以上のような問題を抱える派遣労働ですが、この働き方を選択する場合にはぜひとも抑えておきたいポイントがいくつかあります。第一に、 派遣労働には大きく分けて3つの種類があるということです。常用型、登録型、紹介予定派遣です。常用型は1年以上働くことを見込んでいる場合、 登録型は派遣先に仕事がある間だけ契約を結ぶ場合、紹介予定派遣は3ヶ月間程度働かせてみて派遣先が正社員採用しなければ雇用は終了するという形です。
ここで注意すべきことは、「常用型」といわれていても正社員だとは限らないということです。
派遣会社の正社員として雇用されていれば、比較的安定した雇用であるとは言えます。
しかし、法律的な区分ではかならずしも正社員かどうかがはっきりしないのです。
ですから、自分自身が派遣会社と結ぶ契約が、「期間の定めがない」=正社員、であるかどうかに注意しましょう。
また、紹介予定派遣で新卒を派遣するというケースが増えているようですが、紹介予定派遣はかならず正社員になれるものではないということに注意が必要です。
大手の中には、あらかじめ紹介する中で、「半分だけ採用」などと取り決めて派遣しているところもあります。
つまり、一定の確率で落とされてしまうのです。これは正社員に適用される「試用期間」などとは全く異なります。試用期間は基本的に本採用されることになるのですが、
紹介予定派遣の場合は基本的に本採用されません。あくまでも派遣先が審査のうえ「採用」した場合だけ採用だということです。
以上のように派遣労働のそれぞれのタイプをよく見て選択することが第一のポイントです。
第二に、派遣という働き方はすでに見たように非常に立場が弱いものです。ですが一方で労働者の選択肢が増えるという側面も指摘されています。
例えば、定時で帰れる仕事が見つかる、自宅から近いところで働ける、といったことが言われます。
しかし、実際には結婚、出産などを期に休職を求めると、「次の派遣先は無い」と言われることも多いようです。先ほども書いたように、
派遣会社はどうしても派遣先(顧客)に迷惑がかからないようにすることを優先してしまうからです。派遣は「弱い立場」にあることをよくよく考えて選ばなければなりません。
派遣労働を選択することが働く側にとっても選択肢を増やすこととなる多くのケースは、高い技能を持っている場合です。通訳など専門職である場合には、
仕事を得る機会を増やすことができるでしょう。ただし、専門職派遣の場合にも、
実際には値崩れを起こしている場合もあるのでよくよく業界の事情を把握した上で選択することが好ましいと言えます。
以上のように派遣労働が「自由」である場合は実際には少なく、自分自身に高い技能が無い場合にはなるべく避けるべき選択肢だといえるでしょう。
第三に、もし派遣で就労するという選択をした場合でも、生じてしまったトラブルの中には、派遣を選んだ労働者が一方的に悪いのではなく、 派遣という形で雇い使用している派遣会社・派遣先の雇用責任を追及できる場合が少なからずあります。ですから働いて問題が生じたら、派遣だからと自分を責めるのでなく、 まずは相談窓口があるということを知っておいてほしいと思います。