今回は『POSSE』vol.18に掲載された労働基準監督官へのインタビューの一部を紹介します。
労働基準監督署を利用したいと思っても使い方がよくわからないという声も聞かれます。そこで普段、労働基準監督官として現場で働かれている方々に、労働基準監督署の体制と監督業務などについてお話をうかがいました。
まず、情報提供の数と労働基準監督官の数が釣り合わないという問題についてです。労働基準監督官の数は他の行政機関と比べるとまだまだ十分な規模とは言えず、先進諸外国と比較すると労働力人口比で圧倒的な少なさであるといいます。そのため、現在の体制だと人数的にもすぐ動けない状況があり、相談者は迅速に対応してもらえないという不満を持ったり行き違いになってしまうのではないかということも挙げられていました。
また、労基署で扱える問題とそうでない問題についても言及しています。労働基準法などに違反している可能性がある事案については調査・是正勧告など監督官の権限を行使できますが、最近のブラック企業問題でも言われているような、いじめ・パワハラ・セクハラや退職勧奨など、労働基準法に具体的な義務規定のない分野の事案については、監督官としての権限は行使できないといった、権限上の問題があるといいます。 近年では個別労働紛争解決制度によって、裁判手続きや労使交渉でしか解決しえなかった事案を労働局の指導といった形でアプローチできるようになりましたが、この制度は使用者の理解を得て進める制度のため、解決方法としては難しい部分もあり、それが相談者の不満にもつながるのではないかということを指摘しています。
制度的な限界については、長時間労働の温床となっている労働基準法36条(三六協定)によって過重労働につながる場合でも、具体的な罰則規定もないため、労働者からの申し出がない限り、事前に監督官側から違反を指摘するケースはほとんどないそうです。そこには現場の問題とは別に現行の法律上の限界があり、労働時間も最低基準と同時に上限も例外のない形で法律で決めることが必要です。また、労働者にとっても、労働法が自分たちを守る身近なものでなく、条文がわかりづらかったり労働時間規制が複雑な構造であるがために縁遠いものになってしまっているのではないかという懸念があります。
最近では、法律の抜け道を指南する「専門家」の介在があったり、違法すれすれの労務管理を行うブラック企業が一部では増えているのも事実です。事業場でも指導事項を受け止めてもらえないことがあるといいます。使用者と労働者の力関係のもとでは争われないまま使用者に都合のよい制度がまかり通り、労働者にとっては実態が改善されないという事態が起こります。違法ではない抜け道の運用を防ぐには、労使関係の力関係が非常に大事で、しっかりした労働組合でもって交渉することによって、労働者も納得できる労働条件に変えていくことができるといいます。
他にもなかなか聞くことのできない、労働基準監督署インタビューの詳しい内容については、『POSSE』vol.18で読むことができますので、ぜひ一読してみてはいかがでしょうか。
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『POSSE』は日本で唯一の若者による労働問題総合誌として、2008年9月に創刊しました。NPO法人POSSEのスタッフが中心となり制作し、これまで16巻を出版、4年目を迎えました。労働・貧困問題をテーマに、現状、政策から文化までを論じています。
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