2013/5/18
生活保護制度の現場からの改定案(『POSSE』vol.18)

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POSSE vol.18


今回は『POSSE』vol.18に掲載された藤田孝典さん(NPO法人ほっとプラス代表理事)のインタビュー記事を紹介します。


2013年2月に『ひとりも殺させない――それでも生活保護を否定しますか』を出版した藤田さんですが、この間の生活保護制度・生活困窮者支援をめぐる情勢の動向について、「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」の報告書の批判すべき点を踏まえたうえで、本当に必要な貧困支援について述べてもらいました。


「審議会の報告書としては、二つの方向が示されていて、一つはこれまでの枠組みの対象から外れてしまった人を支援しようということです。もう一つは、そうはいってもそういう人たちをすべて支援することは難しいので、なるべく働いてもらおうという就労支援、あるいは生活保護制度に乗らないように、失業者を早めに支援するということですが、中身は社会福祉の対象として捉えないようにしていくというものです。要するに、まだ対象者を本質的に見定められていない」。(p.144)


「貧困や社会的な孤立は個人的な責任ではなく、社会が責任を持って支援をしていくという方向性を打ち出せなかったという点です。まず必要なのは支援の対象を拡大することだと思います。高齢・障害・児童という旧来型の社会福祉の対象者から漏れてしまっている人たちはかなりいるんです」。(p.144,145)


これらのように審議会の報告書では、貧困や生活困窮というものに対して現状認識が十分でないこともあり、貧困状態にある人や、生活に困った人は自己責任だという世論を反映しているかのようになりました。こういった流れになると「中間的就労は単に安くてもいいから働けという劣悪な労働市場へ送りだすだけの機能にしかならない」ため、多くの人が就労を継続できなくなります。


そのため、どのようにして社会保障制度を変えていくのかについても、現場をずっとみてきた藤田さんならではの「具体的な提案」として述べられています。


「浅く広く対応できることと、そして人脈をもっていることが専門性の鍵になると思います。いろいろなものを駆使して相談に対応できる相談援助技術が必要で、それをケースワークやケアマネージメントではなくてソーシャルワーク、とくにジェネラリストソーシャルワークという、どんな相談があってもその人に合わせてアプローチ方法を変えながら対応できる技術がそろそろ日本に導入されてもいいのではないかと思います」。(p.148)


「生活に困窮している人たちを放置するとどうなるのかという視点で今後10年、20年を見れば、国家の体系は改めてもう一度見直さないといけない。そのためには対象者の拡大と、介護保険制度レベルの保険制度でその人を支援していくという制度づくりが必要だと思います」。(p.149)


今号特集の「ブラック企業対策」と貧困支援は分断させるのではなく、両者は緊密につながっているため、この二つの問題を一緒に解決していくことが、いま求められる最重要課題だと考えられます。そうした理解を深めるためにも、ぜひ一読してください。



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『POSSE』は日本で唯一の若者による労働問題総合誌として、2008年9月に創刊しました。NPO法人POSSEのスタッフが中心となり制作し、これまで16巻を出版、4年目を迎えました。労働・貧困問題をテーマに、現状、政策から文化までを論じています。

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