2013/4/4
生活保護と就労支援の必要性(『POSSE vol.17』)

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POSSE vol.17


2013年1月25日に「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」の報告書が取りまとめられました。 ここでは、生活困窮者への就労支援や中間的就労の必要性が言及されています。今回は『POSSE vol.17』のなかから布川日佐史さんの論文を取り上げ、生活保護からの自立支援における就労支援について考えてみたいと思います。


就労支援には、生活困窮者への支援だけではなく、事業主、特に中小企業に対する支援が必要です。中小企業では人が足りなくても、人材を育てられなかったり、採用できない企業があります。そうした企業に、補助金目当てで雇うのではなく、ビジネスとして成り立つ仕事をつくり、何かあったら外部のNPOなどから伴走型のサポートをする人が来るという仕組みが考えられます。


また、「生活支援戦略」では、社会参加の場や一般就労へのステップアップとしての中間的就労が話題になっています。ここでも考えなければならない点としては、働く側の視点です。


この制度の運用は、最低基準法や労働基準法などが適用されるべきです。社会参加の場や訓練としての意義から労働基準法の適用外として、最低賃金以下となってしまっては労働市場に対して労働条件の引き下げの圧力となります。また、職業訓練の名の下で一時的な雇用でも構わないとなってしまうと、訓練どころか劣悪な環境に送りこまれてしまうことも考えられます。それではかえって自立することが難しく、受給者以外の労働者にも影響を及ぼすおそれがあります。


就労支援において重要なことは、単に正規雇用であればよいというだけでなく、きちんと生活できる所得であり、働き続けられる雇用でなければなりません。何でもいいからと勤め始めて、雇用環境が劣悪で辞めざるをえなくなれば、再び生活に困窮してしまいます。このように、生活保護からの就労支援というと仕事に就くことが優先されがちですが、日常生活がしっかりと安定した環境になるよう社会福祉がまず先にあるべきで、最終的に行きつく先が就労とあるべきです。


また、就労支援は本来、国の機関であるハローワークや労働行政が果たすべき課題です。担い手として自治体やNPOなどが関わっていくことは可能ですが、地方自治体がやれる範囲には限界があります。自治体がやるにしても就労支援サービスにかかる費用は国が出すべきです。


こうした就労支援の参考としては、ドイツの求職者基礎保障が挙げられます。これは国家負担のもとで、最低生活保障給付を行い、同時に就労支援として公的雇用創出をするものです。これを参考にしたものが日本の求職者支援制度とされています。


日本では雇用保険の次のセーフティネットが生活保護になっています。その間に第二のセーフティネットが必要です。求職者支援制度はこれに当たるとされています。これは職業訓練を受けることで、個人だと月に10万円、扶養家族がいれば12万円を受給できるというものです。しかし、最低生活ラインに達していないことから、現状では生活保護より収入が落ち込んだ人向けのものとなっています。また、職業訓練を一度でも欠席すると受給がされないものとなっています。こうした限界から、第二のセーフティネットとして大胆な制度リニューアルの必要性があるとしています。


生活保護と就労支援について興味・関心のある方は一度読んでみてはいかがでしょうか?


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『POSSE』は日本で唯一の若者による労働問題総合誌として、2008年9月に創刊しました。NPO法人POSSEのスタッフが中心となり制作し、これまで16巻を出版、4年目を迎えました。労働・貧困問題をテーマに、現状、政策から文化までを論じています。

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