Q1.不況で経営が厳しいから辞めてくれ、といわれました。辞めるしかないのでしょうか。
A.「辞めてくれ」といわれたとしても、自分から退職届を書く必要はありません。自分は働き続けたい、と主張することが可能です。その上で、会社がそれでも「辞めろ」と強行に主張してきた場合には、「解雇ですか」と確認することが必要です。退職勧奨(退職を促すこと)と解雇では法的な関係が全く異なるからです。
そこで会社側が「あくまでも退職勧奨だ」といえば、断り続けることができます。しかし「解雇だ」ということになると、話が変わってきます。今度は「解雇」が正当なものかどうかを争うことになります。
会社は基本的に解雇をする権利を持っていますが、解雇については法律で強い制限が加えられています。したがって、解雇が正当なものでなければ訴訟を起こしたり、行政をはさんだ話し合いで解決の可能性があります。
解雇の合理性の判断基準は、①経営上の高度の必要性、②配置転換など解雇を回避する努力をしているか、③解雇対象を選定した合理性、④労働側との話し合いをしたか、です。この基準は裁判で用いられるものですが、一言で言ってしまえば、「本当に仕方ない解雇なのか?」ということが基準だといって差し支えありません。納得がいかないときは、まずは解雇の合理性がないことを疑ってみることが大切だと思います。
次に、もし解雇を受け入れる場合でも、一ヶ月前の予告(または一ヶ月間の予告手当て)を支給する必要があります。これが支給されないときには、労働基準監督署から指導を受けさせることが可能です。
Q2.会社から即日解雇を言い渡されたのに、法律に定められている一か月分の予告手当てが支払われていません。
A.法律上の「解雇」に当たるためには、退職届を書いてはいけません。会社から「辞めてくれ」といわれたときに、「はい辞めます」と答えたり、会社の提案を受け入れて合意して辞める旨の退職届にサインをした場合には、「解雇」に当たらないのです。
退職の勧誘(退職勧奨)には応じる義務は一切ありませんので、不本意なら断るようにしましょう。また、予告手当てが欲しい場合にも、断ったほうがよいでしょう。よくトラブルになるのは、予告手当てを支払う約束をしたにも関わらず、退職届を書いたあと反故にされてしまうケースです。条件をつけて退職を受け入れるときには、その条件を記載した書面を交わすようにすることが重要です。
これらを踏まえた上で、もし解雇を受け入れる場合、一ヶ月前の予告手当が支給されないときは、労働基準監督署から指導を受けさせることが可能です。はじめに自分で書面による請求(内容証明郵便など)を行い、それでも支払われない場合、この請求の記録と解雇通知か解雇を証明する書類と給与明細を持って労働基準監督署にいき、「申告」の手続きを行うことができます。
Q3.病気を理由に解雇された
A.たとえ病気になったとしても即解雇が認められるというわけではありません。病気を理由にした解雇が認められるのは、就業規則に定める休職期間中に治る見込みがない場合など、限られています。休職期間の有無、その期間などについて、まずは就業規則を確認してみてください。
業務に関する理由で病気になった場合(例えば過労でうつ病になった等)には、そのことを理由にした解雇は無効となります。また、労働災害(労災)保険により治療費のほか休業補償を得ることができます。すべての病気が労災として認められるわけではありませんが、労災の可能性を疑ってみることは必要です。
もし病気を理由とした解雇が有効だとしても、その場ですぐに解雇に応じなければならないわけではありません。現在の日本の法律では、労働基準法20条の規定により、「少なくとも30日前に解雇予告をする」か「30日前に予告しない使用者は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う」ことが義務付けられています。
この解雇予告または解雇予告手当の支払いをしないで行った解雇の通知は、解雇としての効力を生じません。この場合労働者は、解雇予告手当を(ある場合には未払い賃金や退職金も)請求することができます。
Q4.労災(労働災害)を理由に解雇された
A.労災とは、業務に関連して生じた傷害及び疾病であり、事業者に責任があります。したがって、そのケガについては治療費・生活費が国の保険によってまかなわれるとともに、その治療期間中と復職後30日間においては、使用者は解雇できないことになっています。
Q5.非正規雇用への切り替えを迫られた
A.正規雇用から非正規雇用への切り替えは、労働条件の不利益変更にあたります。労働契約法では、使用者の一方的な意思表示により、労働者にとって労働条件の不利益な変更を禁止しています。
したがって、非正規雇用への切り替えが一方的に行われたのであれば、無効を申し立てることができます。同意を迫られた場合には拒否することができます。拒否したにもかかわらず、強引に非正規雇用の扱いに切り替えられた場合には、同様に無効を申し立てることができます。A.退職を迫られている段階では、どんな理由であっても拒否することができます。退職を拒否したことによって、解雇だといわれた場合には、「結婚・出産を理由に解雇された」の項を参考にしてください。
Q7.会社が社会保険にいれてくれないので、辞めようかと悩んでいる。
A.社会保険(健康保険と厚生年金保険)は、常時5人以上の従業員を使用して適用業種を行う事業所、また法人の場合、常時1人以上の従業員を使用していれば、強制的に加入する事業所になります。社会保険(健康保険と厚生年金保険)は、たとえ非正規雇用であってもフルタイム(一般の労働者の4分の3以上)で働いている場合は、事業者に加入する義務が生じます。
また、厚生年金保険については、適用事業所に該当しなくても、1人だけ単独で加入できる制度(任意単独被保険者という)もあります。
強制適用事業所にも関わらず、社会保険に加入させないという状態は、違法な状態にあるため、すぐに加入させてもらうようにしましょう。
A.会社は内部告発を理由に従業員を解雇することはできません。
平成18年4月に施行された『公益通報者保護法』により、『内部告発者が、不正の目的なしに、個人の生命、身体の保護、消費者の利益擁護、環境の保全、公正な競争の確保などに違反する会社側の行為を監督官庁などに通報した場合、会社が内部告発を理由に内部告発をした従業員を解雇しても、その解雇は無効になること(有期契約の場合、契約解除の無効)』が規定されています。
また、会社が内部告発者に対し、降格、減給など不利益な処分をなすことも禁じられています。
Q9.契約期間の途中で辞めたいが可能か?
A.契約期間の途中でも、「正当な理由」があれば、ただちに解約することができます。
「正当な理由」としては、下記の点が考えられます。
・会社が賃金未払いやセクハラなど法に違反した行為をしている
・労働条件が労働契約と著しく相違している
・やむをえない事由がある(本人の病気、両親や子供の病気の介護など)
・労働契約の期間の初日から1年を経過している
などです。
もし上記のような「正当な理由」がない場合でも、原則として、会社は労働者の意思に反して強制的に就労させることはできません。
上記にあたらない場合には、原理的には会社側からの損害賠償が可能になります。しかし賠償請求を行うためには、具体的な被害額の確定し、請求を行う必要があります。こうした点から、辞めたことを理由に、具体的にそれによって引き起こされた被害の額を特定するわけですが、それが多額に上ることはあまりありません。よほど高度な業務を行っていた場合(新規海外プロジェクトの統括責任者など)以外は、事実上請求は難しいと見てよいでしょう。
アルバイトや定型的な業務の正社員など、(引継ぎによって)他の従業員によって穴を埋めたり、代わりの労働者がすぐに見つけられるような職場の場合には請求が認められることはないでしょう。
Q10.工場・事業所の閉鎖に伴い解雇された
A.経営上の理由による解雇であっても、「整理解雇の4要件」に該当しなければ、解雇することはできません。
経営上の理由により解雇を言い渡されると、多くの労働者は納得してしまうようです。しかし、労働者を解雇するには「人員整理の必要性」「解雇回避努力」「人選基準の合理性」「労働組合・当事者との協議」と、4つの条件をすべて満たす必要性があります。不況の影響でこのような解雇が相次いでいますが、実際にこれらの条件を満たした解雇は多くはありません。
具体的に取りうる行動としては、「工場・事務所の閉鎖」と理由を説明されても、解雇事由の詳細な説明を求めましょう。会社の収支状況、人選の基準などが記載された書面を要求しましょう。会社側には解雇理由証明書の請求に応じる義務があります。
その書面に不明瞭な点がある、またはその要求を会社側が拒否した場合には、不合理な解雇の疑いが強いでしょう。
Q11.会社が倒産し、賃金が未払いになっている
A.会社が倒産したとしても、会社の残った財産から未払い分の賃金を労働者が請求する権利(労働債権)は、先取特権として法的に保障されています。ただし、個人の力で確保することは困難なので、他の労働者と団結して交渉にあたることをおすすめします。くれぐれも、会社の倒産が労働契約の終了となるのではない、ということに留意しておきましょう。
その上で、たとえ会社に未払い賃金を支払うだけの財産が残っていなくても「賃金の支払の確保等に関する法律」(略して「賃確法」)に基づいた「未払い賃金の立替払制度」により、政府に立替えを要求することができます。
未払い賃金の立替払制度とは、企業が倒産したために、賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、その未払額(最高370万円)の一部(80%相当額)を労働福祉事業団が事業主に替わって支払う制度です。
この申請は、退職の日の翌日から6ヶ月以内の間にしなければなりません。倒産が原因で賃金未払のまま退職したら、できるだけ早く労働基準監督署へ相談に行きましょう。
以上をまとめると、倒産に伴う未払い賃金については労働組合に加入して従業員が一丸となって回収に努めることが重要であると同時に、財産そのものがないなど回収が困難な場合にはなるべく速やかに立替払い制度を利用することで、未払い賃金の回収が望めます。
Q12.人間関係がうまくいかず辞めたい
A.上司とそりが合わない、同僚とうまくいかないなどの理由で退職することは可能です。正社員である場合には、2週間の予告期間をおけば、労働者はその理由の如何を問わず(やむをえない事由がなくても)辞職することができます。この場合の退職は自己都合として扱われます。
ただし、そうした人間関係が意図的に作られた場合もあります。会社側から退職勧奨を受けたような覚えがあり、ある時期を境に人間関係が悪化したなどの場合、会社は労働者が自分から辞めるように意図的に仕向けている可能性があります。
そのような行為がエスカレートする場合には、人権を侵害するものとみなされます。会社の意図をはっきりさせ、解雇の意図があるならばそれに応じた責務を求めることが可能であると同時に、人権侵害行為については賠償を請求することが可能です。さらに、結果としてうつ病などに罹患した場合には労働災害として保険の申請、使用者の責任追及も可能です。
最近は自己都合退職をさせるために、人間関係を意図的に悪化させたり、上司がパワハラやセクハラを行い、働きづらくさせるケースが増えてきています。辞める前に、一度検討してみましょう。
もちろん、こうした不法な意図がない場合(上司との個人的な不和など)でも、安心して働くことができる職場環境の保持は会社の義務です。したがって改善を求めることができます。
Q13.上司のパワハラがひどいので辞めたい
A.基本的に、労働者が退職することは自由です。退職届を提出すれば辞めることができます。辞めた後で、賠償金や罰金を払わなくてはならないということは当然ありません。
パワハラは判断が難しく、言われた本人にとっては厳しすぎる言動・行為であっても、業務上の指導の範囲内とみなされるケースがあります。ただし、業務とは無関係な、人格を否定する発言(「死んでしまえ」「親が悪い」など)は業務とは無関係であり、常軌を逸した指導としてハラスメントと見なされる可能性が高くなります。
そうした発言をボイスレコーダーで録音する、紙で記録をしておく、同僚らに証言を求める等をして、記録を残しておくことで、損害賠償など会社の責任を追及することも可能です。また、パワハラが原因でメンタルヘルス疾病等を発症し、働けなくなった場合には、治療費や生活費を労働災害保険から保障させることができます。
Q14.パワハラがあるが辞めたくない
A.会社に対して職場環境の改善を求めることができます。会社には労働者が安心して働くことができる職場環境を保持する義務があるからです。パワハラをしてくる上司に対して、面と向かって抗議することは難しいですが、ハラスメントの証拠と証言者を集めた上で、労働組合や都道府県の相談窓口に相談すれば、団体交渉や斡旋によって職場環境の改善を求めることができます。
ただし、パワハラは判断が難しく、言われた本人にとっては厳しすぎる言動・行為であっても、業務上の指導の範囲内とみなされるケースがあります。しかし業務とは無関係な、人格を否定する発言(「死んでしまえ」「親が悪い」など)は常軌を逸した指導としてハラスメントと見なされる可能性があります。そうした発言をボイスレコーダーで録音する、紙で記録をしておく、同僚らに証言を求める等をして、記録を残しておくことで、損害賠償など会社の責任を追及することも可能です。パワハラが原因でメンタルヘルス疾病等を発症し、働けなくなった場合には、治療費や生活費を労働災害保険から保障させることができます。
Q15.結婚・出産を理由に解雇された
A.結婚、妊娠又は出産したことを理由にして解雇することはできません。特に、妊娠、出産に伴い産前・産後休暇を申請したことや、妊娠・出産に伴う体調不良等により働けなかったこと、労働能率が低下したことなどを理由にして解雇することもできません。
解雇のほかにも、有期契約の更新をしない、労働契約内容の変更の強要、不利益な評価等本人にとって不利益な扱いを行うことも禁止されています。また、出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、その解雇が、妊娠・出産を理由とするものではないことを企業側が証明しない限り無効となります。
なお、産前・産後休暇は現在の職に復帰できることを期待してとるわけですから、休暇前の職あるいはそれに相当する職に戻れないような状況にすることも禁止されています。こういった場合、解雇無効を争うかたちで労働審判あるいはユニオンでの団体交渉によって解決していくことが考えられます。
Q16.契約の更新を拒否された
A.契約更新を繰り返し、一定期間雇用が継続していたなど、労働の実態が正規雇用と変わらない、あるいはそれを期待するだけのものがあった場合、契約を更新できる可能性があります。
具体的には、これまで何度も契約更新を続けてきた場合(契約更新の際に、書面のやり取りがなかった場合でも、あった場合でも)や、契約締結時や更新時に、「この労働契約期間が終了した後も契約を更新するつもりでいる」という明示(労働契約書の記載や、担当者の発言等も含む)があった場合などです。
こういった場合、実態が正規雇用と変わらない、あるいは働く側に契約の更新を期待するだけの理由があるとして、契約更新の拒否は解雇と同様のものとみなされ、解雇(=契約更新拒否)には正当な理由と手続きが必要になります。
ここで、解雇(=契約更新拒否)に正当な理由があるかは労働審判やユニオンでの団体交渉によって争うことになりますし、仮に解雇に相当するならば、30日前までに更新の拒否を言い渡す必要があり、もし30日に満たない場合は、更新の拒否を言われた日から契約期間満了までの日数で30日に満たない日分の賃金(「解雇予告手当て」(「Q解雇予告手当てが支払われていない」へ))をもらうことができます。
雇止めについては、実際の労働契約の内容や、締結・更新時のやり取り、勤続年数や契約更新の実態、実際の職務内容等によりケースバイケースですので、早めにNPOなど専門家に相談することをおすすめします。