ケース4 〜残業代を取り戻す〜
このケースで相談してきたのは、大手飲食チェーンで働いていた学生でした。ここの店は、この学生に残業代を全く支払っていなかったのです。
そもそも、残業代についての誤解はとても多いと思います。「片付けの時間」や「着替えの時間」などがよく無賃になっていることがありますが、これらはすべて労働時間であり、賃金を支払わなくてはなりません。
また、労働時間は1分単位で計算しなければならないので、15分ごとや30分ごとといった基準は違法なものです。
さらに、8時間を越えて働く場合には越えた部分について25%増しの時給を支払わねばならず、深夜10時から総長5時までの間も25%増しの賃金を支払わなければなりません。8時間を越えて深夜に働く場合は50%ましになります。
さて、この店では、残業代の割り増し分を支払わないどころか、店側で毎日の売り上げの基準を定めて、その日の売り上げがその基準に到達しないときには「ペナルティー」として、働いた時間を短く「改ざん」し、短くした分の給料のみを支払うという、さらに悪質なケースでした。
まず本人に法律的なことを説明し、何回か打ち合わせをした上で、NPO法人POSSE(ポッセ)の労働相談班のメンバーと一緒に、会社の本社人事部に赴きました。
通常、こうしたケースでは、働いた側に、「この時間からこの時間まで働いた」という証拠がなく、店側もタイムカードなどの証拠を出さないため、相談しても泣き寝入りになってしまうことがよくあります。
しかし、今回は相談者が、NPO法人POSSE(ポッセ)にあらかじめ相談していたことから、労働時間や、店側からの指示などについて、詳細なメモをとっていたのでした。
法律に違反し、具体的な記録がある場合、ほとんどの会社は言い逃れができません。
結局、このケースでも、残業代の未払いや、労働時間の「改ざん」について、具体的な事実を指摘したところ、あっさりと会社が非を認めて支払う運びとなったのです。
NPO法人POSSE(ポッセ)では「しごとダイアリー」という記録のための手帳を300円で提供しています。交渉においてはとにかく記録が大事になってきます。
もちろん、相手の違法行為が明白な場合は詳細な記録がなくとも過去の賃金を取り戻すことができる場合があります。
いずれにせよ、「相手が法律違反をしている」という事実がある以上、基本的に残業代の不払いは取り戻すことができますし、具体的な記録を残しておくことで、解決は、より確実になります。