裁量労働制
Q.IT企業でシステムエンジニアとして働いています。会社からは「裁量労働制」の労働者と言われており、基本給18万円に加えて2万円の裁量手当が支払われるだけで、残業代は払われません。しかし、実際には、出勤・退勤時間が会社から管理をされていますし、仕事の進捗についても上司から逐一チェックを受けます。残業代が払われないのはおかしいのではないでしょうか?
A.「裁量労働制」の場合は、会社は労働者の労働時間を管理してはいけませんし、仕事の進捗管理もせず、労働者の「裁量」に委ねなければなりません。そのような状況では合法的な「裁量労働制」とは言えず、未払い残業代を請求できるでしょう。
「裁量労働制」とは
裁量労働制には、①専門業務型裁量労働制(労基法38条の3)と②企画業務型裁量労働制(同38条の4)の2つがあります。これらは、業務の性質上その遂行方法を大幅に労働者にゆだねる必要がある場合に、実労働時間とは関係なく、労使協定や労使委員会の決議であらかじめ定めた時間を労働時間とみなす制度です。これらの制度が適用されるためには労働者に業務時間の裁量権がある場合であることが必要です。
①専門業務型裁量労働制
業務の性質によりその遂行方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるために、使用者が業務の遂行手段や労働時間配分について具体的な指示をすることが困難な業務として厚生労働省令で定められている業務に適用されます。制度を導入するには、労使協定を締結し、対象業務を特定し、労働時間のみなし規定を置かなければなりません。
②企画業務型裁量労働制
事業運営に関する事項について企画、立案、調査及び分析を行う業務であって、業務の性質上その遂行方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるために、使用者が労働の遂行手段や労働時間配分について具体的な指示をしないこととする業務に適用されます。制度を導入するには、労使委員会の決議と届出が必要です。
実質的な裁量がない場合は違法です
裁量労働制では、労働者に労働時間をある程度コントロールする権限を与えておかなくてはなりません。
・業務時間や仕事の進行は上司が管理している。
・定時に出勤して定時まで会社にいる必要があると言われている。
・専門業務だけでなく、事務作業なども掛け持ちしていて、勤務時間が自由にならない。
といった場合には違法になる可能性が高くなりますので、ご自身の働き方と照らし合わせてみてください。