雑誌『POSSE』創刊について

NPO法人POSSEの設立からおよそ2年が経ちました。
この2年間で日本社会を取り巻く状況は大きく変化しました。
私たちPOSSEや社会運動の取り組みも、
新しく進化する時期にさしかかっています。

POSSEの発足当時、世間では若者の「自己責任論」が
猛威をふるっていました。
アンケート調査や労働相談を通じ接してきた
同世代の若者の多くは、残業代不払いや有給を取得できない
状況、あるいは理不尽な解雇に対して「自己責任」だと
割り切っていました。
「この会社を選んだ自分に責任がある」。
この言葉を何度聞いたか知れません。
若者にとって企業や社会のあり方を批判することは、
とても難しいものでした。

しかし世論は大きく変化しました。
2年間を通じ格差や貧困、企業の責任を追及する考え方は
以前よりも浸透してきました。

政治家や企業の態度もかなり変化してきました。
私たちの調査結果や労働相談などの取り組みも広く報道され、
こうした世論の変化の一端を担うことができたものと
自負しています。

一方で、格差社会の告発は「ロスジェネ」という
言葉に見られるように、格差や貧困を
一定の世代が被った悲劇と捉える見方を広げてしまいました。
格差社会は一時の不景気がもたらしたものではなく、
この社会全体の変化の産物です。
実際景気が回復し、正規採用が増えたとされる
20代の「ポストロスジェネ」もやはり貧困と格差の中にあります。
大量採用・大量解雇、いじめや鬱が広がる職場、
あいかわらず高い非正規雇用率。
とても安定した生活環境があるとはいえません。

『POSSE』はただ世代の悲惨を憂うだけではなく、
この社会全体の変化に切り込むことを目的としています。
貧困や格差の現実、そして社会正義が実現されていないこと。
若者の「自己責任」という次元で労働問題を語り得ないことは
もはや自明となりました。

今必要なことは、新しい社会の創造へ向けた
プロジェクトを開始することです。
現在の日本社会をどう捉え、何を行うべきか。
必要な政策や行動は何なのか。
私たちはこれらの議論を重ねることではじめて、
労働運動のネクスト・ステージを切り開いていくことが
できると確信します。
この雑誌の発刊が、若者による社会創造の一助となれば、
望外の喜びです。

NPO法人POSSE代表 今野晴貴

雑誌『POSSE』とは

このたびNPO法人POSSEでは、労働や貧困問題などを
専門的に取り扱う雑誌『POSSE』を創刊いたします。

雑誌『POSSE』のテーマは「新しいヴィジョンを拓く
労働問題総合誌」です。
労働や貧困の問題はもちろん、福祉や現代社会を生きる
若者の「いきづらさ」の問題やライフスタイル、
文化など現代社会の多様な問題を「労働」を
切り口にして、理論的に論じていきます。

さらに雑誌『POSSE』では若者の格差や貧困などの
悲惨な実態を紹介するだけではなく、
こうした現状を変える、具体的な政策議論を行う場を
つくりたいと考えています。

また海外の労働に関する思想の紹介なども行う予定です。

そうした議論を通じて、若者が働きやすく
生きやすい社会を実現し、格差と貧困の社会を変える
ヴィジョンを作り上げたいと思います。
またそれを通じて若者や若手研究者が互いに議論し、
つながりあうネットワークの構築を目指していきます。