2014/1/6
アルバイトから見たワタミ(『POSSE vol.20』)

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POSSE vol.20


今回は『POSSE』vol.20でとりあげた、ワタミの居酒屋チェーンで働く学生アルバイトへのインタビューを紹介します。インタビューした二人の学生は、それぞれ関東の別の店舗のワタミフードサービスの居酒屋で勤務していましたが、二人の話からはそれぞれ、ブラック企業大賞を受賞したワタミならではの現場の実態が垣間見えます。


Aさん、Bさんのいずれの店舗も社員は店長ただ一人しかおらず、他は皆バイトです。二人の店舗ではそれぞれ独自の環境があるようで、Aさんの店舗では研修が十分に行われないままにシフトに入れられ、いわゆる「理念教育」も徹底的に行われているというわけではないようです。店長はその多忙さのために、そこまで身が入っていないようでした。一方、Bさんの店舗では、研修が数回、それも真夜中から早朝まで徹底的に行われており、また、こちらでは「理念教育」も熱心に行われ、店長はその価値観を強烈に内面化し、渡邉美樹の講演会に行ったという話や、「ワタミらしさ」の話をしばしばアルバイトにレクチャーしていたようです。


このように店舗によって差がある部分が存在する一方で、二つの店舗に共通する点もいくつかあります。一つは先ほども触れましたが、店舗に正社員は店長ただ一人しかおらず、彼らは過重な負担を担っているということです。一人で大きな責任を持って店を切り盛りしなければならない一方で、開店前の午前中にはしばしば会社の研修や会議に出席しているとのことでした。午前中には会社の用事、そして午後から深夜まではそれぞれの店舗で働いていたという点はAさん、Bさん二人の店舗で共通しています。二人が語る、店長の「寝る暇もない」という発言や、店長が話している途中に突然黙り「いま、何ていってたっけ?」といって直前に話していた内容を忘れることがあったという話からは、店長の過酷な労働実態を容易に想像することができます。


また、もう一つ共通しているのは平然と労基法が破られているという実態です。就業の20分前に店舗に来なければいけない一方でその分の賃金は発生していないことや、就業規則の改変や時間外労働をさせるための労使協定に必要な労働者代表というのが勝手に決められていて、その選任に同意するという書類に自分の名前が勝手に書かれていたということもあったそうです。これらの件はいずれも、以前ワタミフードサービスが労基署や厚労省から指摘され、改善したと主張してきた部分でもあります。


このように、アルバイトの話を聞くだけでもその労務管理の実態には明らかな問題点があり、しかもそれらは以前から指摘されてきた点でもあります。こうした実態の一方で、先日のブログ記事でも取り上げたように、ワタミは2008年に発生した過労自死事件について「労務管理に問題があったとは思っていない」「真摯に対応する」という主張を繰り返してきました。その責任についてはこれからも徹底的に追及していく必要があります。


記事の詳細については、『POSSE』vol.20をご覧ください。また、vol.20では連載「ブラック企業のリアル」で「ワタミの介護」についても、当事者のインタビューを掲載しています。



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『POSSE』は日本で唯一の若者による労働問題総合誌として、2008年9月に創刊しました。NPO法人POSSEのスタッフが中心となり制作し、これまで21巻を出版、5年目を迎えました。労働・貧困問題をテーマに、現状、政策から文化までを論じています。

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