9月22日(土)に下北沢の北沢タウンホールにて、『POSSE vol.16』刊行記念トークイベント「『ケア労働』が「ブラック」化する?」を開催しました。 今回の講師は雑誌『POSSE vol.16』に、論文「「主婦労働」の影が福祉を損なう――「無償」「献身性」が抑え込む良質のケア」を寄稿していただいた竹信美恵子さん。
現在、和光大学の教授を務めておられますが、それまで朝日新聞の記者、編集委員としてご活躍されてこられ、労働問題に関する数々の著作を発表されておられます。当日の午前中は熊本へご出張されていたとのことで、まさにご多忙の合間を縫ってご登壇いただきました。 お話の内容は、論文にもお書きになられていた、福祉労働が日本ではいかに偏見にさらされ、賃金や労働条件が悪くされていったか、という経緯や、そうならなかったデンマークの状況について、また今後の展望についてです。
わたしがとくに印象的だったお話がふたつあります。 ひとつは、日本では、主婦労働に代表される家族介護的な心象風景を、新自由主義的な考え方が小さな政府構想などにうまくイメージをくっつけて利用し、福祉の労働条件の引き下げにつなげようとしているという指摘と、その情報を竹信さんが記事にされたことについてです。
そうした考え方を推進する自民党の保守派議員の発言を紙上で公開し、大きな反響を得たところ、表立っては極端な主張がされなくなったということ。きちんとマスコミが正しい情報を広め、それを市民が共有して意見をだせば、政治の間違った主張は正していけるという実例だと思いました。 もうひとつは、ケア労働の労働者の安全衛生という観点から、腰痛予防を推進する、という話。悪化してしまった介護労働の賃金や待遇改善が喫緊の問題であることは当たり前ですが、労働者の保護としてすぐにできることとして、腰痛改善策である持ち上げの重量制限などを労働安全衛生法などで規制を行っていくべき、という指摘です。デンマークではすでに実現しており、使用者側や政治でも取り組みやすいことなので、実現をしていきたいということでした。
労働条件が悪化していく、そのことにどう対応していくべきか。課題が山積みのなかで、ひとつひとつの論点について、きちんと経緯を把握し、現状を冷静に分析して、有効な手立てを講じていく、その実践を改めて教わったように思います。 後半の雑誌『POSSE』編集長の坂倉との対談では、ケア労働の現場からの労働相談の増加、雇用創出としてケア労働の規制緩和にばかり注目が集まっていることなど、雑誌『POSSE』が介護・保育などケア労働について取り上げた経緯、また生活保護バッシングによる親族扶養義務と介護・保育改革の関係も絡めてさらに話がもりあがりました。
時にはするどい軽妙な皮肉を織り交ぜた竹信さんのお話に、参加者も笑いを誘われつつ、とてもひきこまれていました。また、質疑応答でも時間ぎりぎりまで熱心な質問が多く寄せられ、議論が深まったことも印象的でした。
POSSEでは今後もこうしたイベントを企画していきますので、機会がありましたら、ぜひご参加下さい。 また、雑誌の取材、誌面デザイン校正等の編集作業を行うボランティアスタッフも常時募集しておりますので興味のある方は下記連絡先までご連絡ください。 『POSSE』編集部ボランティア(社会人 女性) *********************************************
最新号『POSSE vol.16』発売中!
【→POSSEを購入する】
【16号目次はこちら】
『POSSE』は日本で唯一の若者による労働問題総合誌として、2008年9月に創刊しました。NPO法人POSSEのスタッフが中心となり制作し、これまで16巻を出版、4年目を迎えました。労働・貧困問題をテーマに、現状、政策から文化までを論じています。
Facebookページを開設しています。
『POSSE』編集長twitterアカウント@magazine_posse